おやすみナイチンゲール

■過去を思い出す
本編を書いた時点で「一成が過去を思い出す」ことは決まっていたので、後日談を書くつもりではいました。が、こんなに長くなるとは思わなくてですね……。10万字くらいかな~と思ってたら20万字でした。なぜ。
最初はあくまで「夢を見る」という形で、過去を思い出すというより過去を知る、という感じです。ただ、この辺りはわりとストレートに「死ぬ場面」なので大丈夫かな……と思っていました。あんまり具体的には書いてないですが刺されてるシーンだし、血だまりに倒れているので……。最期の瞬間も素直に辛い……とはなっていました。
ただ、この辺りは本編の補完でもあります。本編で一切出てこなかった「なぜ一成は最期に天馬に電話をかけたのか?」への答えで、ストラップを握りしめていた理由です。本編はあくまでも天馬が知ってることしか書けなかったので出せなかったんですが、今回一成が過去を思い出す・知る話だったので、ようやく回答を出すことができました。
一成はきっと最期の瞬間まで天馬のことを想ってたと思うんですよね。ストラップが血まみれだったのも天馬の面影を握っていたからだし、何よりもとっさに天馬に電話をかけるって判断してるので。明確に「天馬のことが好き」という自覚はしてないけど、一成にとってずっと天馬は特別な人で、それが最期に形になったのが「電話をかける」という行為でした。
この話聞かされたら絶対に天馬が後悔するんですが、一成なら「電話に出なくてよかった」って言うだろうなと思って。一成は天馬の声が聞きたかったけど、死ぬ間際の自分を思い出してほしいわけじゃないし、天馬の後悔になりたいわけじゃない。天馬が一成を思い出すなら、思い描いただけで天馬が笑ってくれるようなそんな自分がいいって、心から願うと思ってます。


■眠れない一成
悪夢を見ることで段々追い詰められていくし、最終的には過去を思い出すことで上手く眠ることができない、という流れは決まってました。ただ、悪夢を見るだけなら天馬がどうにかするんじゃないかな?と思ってました。明確に「思い出す」ところまで行ってないので、それならたぶん一成は天馬にちゃんと話してくれるんじゃないかなぁと。(ハッキリ過去として思い出してしまうと、現実の強さを認識してしまうので話すのをためらう)
そういうわけで前編の最後のシーンになるんですが、正直プロット作ってる段階から「ここで終わりで良くない?」とは思ってました。ここ、プロット的には起承転結の承なんですよ……。幸せなてんかずが読みたかったらここで終わればいいのでは???とわりと思ってたし、ここから辛くなるので本当ごめん……と思いながら書いてました。
というわけで、単に「悪夢を見る」だけなら恐らくここで解決します。天馬が心からの愛情を込めて、死ぬ瞬間に願ったことを叶えてくれた。呼んでほしいと願った名前を何度も呼んでくれる。それは確かに一成の力になって、悪夢を追い払ってくれる。
なので、「過去の記憶を夢に見る」だけで済んでたなら、たぶん一成はちゃんと眠れるようになってたはずなんですが、まあ元々「過去を思い出す」は決まってたので……うん……。


■公園
天鵞絨駅から二駅ほど離れた先にある公園。古くからあるおかげで敷地も広いし、木が多い。特にモデルになった公園はないんですが、地域にある大きめの公園を想定しています。近所の公園っていうより、ちょっとしたイベントがある時とかに使われてそうなイメージ。
天鵞絨駅から二駅って距離感ですが、東京の二駅だし実際そんなに離れてないと思います。MANKAIカンパニーからは電車→徒歩で行けるイメージですが、徒歩だけで行けないこともない。一成が死んだ過去においては、天馬と三角のいた位置が天鵞絨駅から離れてた+結構公園寄りだった、というわけでさらに近かったので走っていったという経緯があります。


■一成の友人(モブ)
話の展開上、どうしても大学の友人が必要だった。一成が過去を思い出すのは件の公園に行くからで、その時はカンパニーのメンバーが誰もいない状況、となったらまあ大学関係だろうというわけで、モブ友人を出しました。最初に一成のことを心配するシーンで都市デザイン論云々言ってるのも、公園へ行くための伏線です。(この辺の架空の講義考えてるの楽しかった)
この友人は、思ったことがすぐ顔と口に出るし、裏表がマジで一切ない人です。話を進めるにあたって、モブ友人に描写割いても仕方ないので深読み発生しないタイプにしようと思って。純粋に一成のことを心配してくれるいい人だし、大学の暗い所の情報とかもいっぱい教えてくれます。一成と同じく日本画専攻だからいい情報源になってくれそう。なお、書いてるうちに将来的に三角のファンになるフラグが立ってたのでちょっと面白かった。


■一成の力になるMANKAIカンパニーのメンバー
それぞれのできることで一成の力になるカンパニーのメンバーが見たかった。ので、全員どういう風に力になってくれるか?は考えてたんですが、その内、今まで作中に出てこなかったメンバーを中心にエピソードを書きました。

・至と綴
この二人がいた時点で「夜更かし組じゃん……」ってなっちゃって。加えて、一成は今回の件で夜を怖がるけど、元来一成って夜型の人間だよなぁと思ってたというのがあります。だから、今の一成にとって夜が怖いものだったとしても、今までの一成にとって夜はやさしいものだった、と思い出してほしいなと思って書きました。夜は確かに怖いものかもしれないけど、同じくらいに夜に救われる日はある。
夏組の誰かはいるだろうな、と思ってメンバー考えた結果九門くんになったのは、恐らく至さんとの中二病コンビが好きだから……。かわいい……。あと、九門くんならこの中二病要素で暗闇とか夜とかに肯定的でいてくれるだろうなと思って。綴は素直に徹夜が多いというのもあるけど、だからこそ夜の特別な空気感とかを知ってて好きだと思ってくれるんじゃないかなって。なので、実はここの4人は密かに「夜を愛する者チーム」と名付けてました。まあ、カンパニーそういう人もっといそうだけど!
中庭どうにかするまでは談話室で寝る、というのは決めてて、さらに、夜中に至さんと邂逅するなら談話室が一番確率高そうというわけでトップバッターがこの話でした。

・真澄
それぞれの方法で力になる、という点で真澄くんの場合を考えた結果が「ヘッドフォンで音楽を聞かせてくれる」でした。各自がどんな方法で助けになるか色々考えたんですが、たぶん最初くらいに出てきたんじゃないかなこのエピソード。
真澄くんは監督の言葉があるから一成のことを助けてくれるんだけど、根幹にはちゃんと一成への親愛があると思ってます。「一成はいつもうるさいから、静かにしてるならそれでもいいけど――別に苦しんでほしいわけじゃない」というのが本音だと思う。真澄くんは裏表がないというか、思ったことを素直に言うから書いてて新鮮な気持ちでした。心の声が言葉とイコールになっている……。そんな真澄くんなので、行動もわりと心とイコールになるんじゃないかなと思います。なので、ヘッドフォンを貸してくれるとか、腕を引いて明るいところに連れ出してくれるとか、わざわざ夏組を呼んでくれるとか、そういうのは真澄くんの親愛の表れなんですよね。
最後、「俺が一成を守る」って言ってるけどマジで一切一成へのラブが含まれてない(監督へのラブしかない)のめちゃくちゃ真澄くんだな……って書いてて笑ってました。

・ガイ
ザフラのおまじないをやってほしかった。たぶん、真澄くんの次にできたエピソードだと思います。最初からずっと考えてたから、ようやくザフラのおまじない書けるの楽しかった。
ガイさんはたぶん、ザフラにいた時は何の感慨もなくおまじないをしてたけど、今は心からの祈りを込めてくれてて、シトロンはきっとそれも嬉しいんじゃないかな。(ザフラ時代もよくわかってないながらおまじないしてくれることは喜んでたと思うけど)ガイさん自体確かな年月を重ねた人だからこその深みがあるし、そこにザフラの歴史が上乗せされたらそれはもうよく効くおまじないになりそう。夢を見る頻度が問題じゃなくて、一成の辛さに寄り添ってくれるガイさんが好きです。
なお、ガイさんはマジで何の他意もなくオレンジブロッサムを選んでるんですが、無意識で正解チョイスしがちなところあるよねと思ってます。あと、おまじないは完全に架空です。内容もそうだし、おまじないの言葉も元になったアラビア語をちょっとだけいじったものなので、特に実在はしてません。

・丞
「一成を助けるのは当然」だと思って丞は行動するだろうな、というわけでこんな話でした。迷惑をかけたことを申し訳なく思う一成に対して、「何を言ってるんだ?(理解できない)」って本気で思うのが丞。
あと、丞って結構線引きがしっかりしてるイメージがあります。演劇とそれ以外とかに分けがちというか、自分の世界の境界線を理解しているというか。MANKAIカンパニーに所属するようになってからだいぶその幅は広がったと思うけど、それでも自分が大事にするものはこれ、ていうのを決めてる気がする。その中に当然一成も入ってるんだと言ってくれるし、行動でも示してくれるのが高遠丞なのではないかと思ってます。
加えて、やっぱり丞には運転手やってほしい的な気持ちがあったので、一緒にショッピングに行ってもらいました。自分は用事ないのに足になってくれる丞が好きで……。
具合の悪くなった一成を担ぐくだりは、何か気づいたらそんな感じになってましたが、これおんぶとか横抱きとかではない気がする。荷物担ぎしてそう。何にせよ、たぶん丞は一成の軽さにわりと素で驚いてると思うし、その後筋トレやらせようとしてそうだなって思ってちょっとウケてました。


ガイさんのところでシトロン、丞のところで紬が出てくるんですが、この二人は特に想定してなかったのに気づいたらばっちり出てました。まあ、何かそうなる気はしてた。
明確に二人の関係に言及してるのはシトロンだけなんですけど、あの辺のくだりが個人的に好きです。明るくお茶目で、だけど誰より洞察力あってやさしい人だなってシーンなので。紬は幸へのフォローとかがさすがすぎて自分で書いてて感動してた。「雨を恨むよりも乾いたタオルを持ってくることが大切」も好き。何だかんだで前向きな紬らしいと思う。


■夏組と天馬
カンパニーのメンバーだけではなく、当然夏組も力になってくれます。ただ、当初はあくまでもカンパニーのメンバー中心にするつもりだったので、夏組はそんなに出てこないかな~って思ったんですがそんなことはなかった。むしろ各エピソードで一人ずつちゃんと出てきた。
・九門
至さんと綴のところでも書きましたが、九門くんは夜を肯定してくれるかなと思って。三角も夜のイメージあるけど、九門くんは明確に「眠れない夜」を知ってるんじゃないかなというのもあります。無理に寝なくてもいいんだよって言ってくれる九門くんが見たかった。
・三角
今度はちゃんと迎えに行ける、と思って走る三角のイメージでした。一成が死んでしまった過去でも三角はちゃんと走っていきたかったけどその願いは叶わなかった。だから今度こそは、と思って全速力で駆けつけます。この時にみんなの願いを一緒に持って走ってくれるのが三角だなと思う。
・椋
気づいたらアロマオイルを手作りしていた。いや何か椋は一成の安眠のためにできることなら何でもやりそうだなとは思ったんですが、まあ椋だし……?202号室で一緒に眠ることはできなくても、アロマオイルがあることで椋の存在を感じられるのでエピソードとしてもわりとありがたい。
・幸
幸くんなら一成を連れ出してくれる気がして。はっきりと言葉にはしないけど、幸くんは一成のためにできることを考えてさらっと実行すると思うんですよね。手芸店で「最高の衣装作るから」と答えているのは、一成が死んだ過去において「オレはオレの最高の衣装を何度だって作ってみせる」という決意があるからです。
・天馬
カンパニーとか夏組のターンが多めなので「これはてんかずか??」って何回か思ったんですが、二人だけのシーンになるとすぐいちゃつくので「てんかずだったわ」ってなりました。学校から急いで帰ってくるシーンとかずっと「玄関先だぞ」って思いながら書いてた。
でも、天馬は本当に要所で一成の異変に気づいてくれるのでさすがは天馬……と思ってました。昼間なのに倒れそうになった時、一成は「以前の自分じゃないんだ」ってことを思い知ってショックを受けるんですけど、天馬は「お前はお前のままだよ」って言ってくれる。以前と違っていても「お前はずっとオレの好きな一成だ」って肯定してくれるのは一成にとってすごく大きいと思うんですよね。以前のままじゃないけど、それでも好きだって言ってくれるのは。
あと、みんなが一成の体調回復を祈って悪夢を見ないようにって色んなことをしてくれるのに、それでもやっぱり悪夢を見てしまうことに落ち込むんですけど。この時もやっぱり「以前のようには戻れないかもしれない」って思う一成にそれでもいいって言ってくれるんですよ。もちろん、良くなるって信じてくれることも大きいんだけど、もしもこのままでも、良くはならなくてもそれでも一緒にいるってメッセージはめちゃくちゃ心強かったんじゃないかなぁと思います。


■レッスン室
レッスン室で寝る夏組のエピソードは最初から決まってました。一成が死んだ過去において、5人が一緒に寝てたっていう話があったので、今度は6人でその記憶を上書きしてもらおうというのと、一成の痛みを分かち合うなら同じく痛みを分かち合ったこの場所が相応しいかなと。
一成の傷を、重荷を分けてほしい、というくだりのため、過去における葬式エピソードを入れたんですが自分で書いてて辛かった。
幸の「クロがシロを置いていくわけない」
三角の「じいちゃんとオレのこと待っててね」
九門の「目を開けてよ」
椋の「カズくんを、連れて行かないで」
この辺りで何かすごく悲しくなっちゃって……。心の底から「一成生きててよかった」と思いました。(自分で書いた話なのに)しかし、こんな葬式の記憶持ってたらそら過保護にもなるな……と納得してしまった。


■6人でいること
一成はきっと、自分の痛みや傷を夏組に渡そうとしないだろうと思います。だけど、それでも分かち合いたい夏組や天馬は何を言うかなと考えてました。そしたら、やっぱりここは天馬が告げる「6人でいること」の意味かなと思います。
これは「一億光年の恋」でも言ってるんですが、夏組は6人でいることをものすごく大事にしてるんじゃないかなぁと思ってます。6人がそろっていれば何だってできる、どこへだって行ける、最高の舞台を何度だって作れる。そういう信念をきっと全員持っている。だからこそ、一人が欠けてしまったことが痛くて仕方なくて現実に打ちのめされたんですが……。それはたぶん6人でいることを何よりも大事だと思ってる証拠でもあると思います。
一成だってこの信念は同じなので、「今ここに6人がそろっている」という前提を示せば、一成の傷だって痛みだって持っていられるって言葉が、どれほど説得力があるものか理解する。たぶん、6人がそろっていれば何だってできる、どこへだって行けるっていうのは、無敵になれるって意味じゃなくて。6人が一緒にいれば足は前に進むって意志なんだと思います。怖いものはたぶんまだたくさんあるんだけど、一人なら立ち止まってしまうんだけど、夏組が全員そろっているなら、高い空まで駆け上がるために足を踏み出せる。だから、一成の傷だって苦しみだって重荷だって、一緒に持ってそれでもどこへだって行けるんだって思ってくれると信じてる。
……っていうわけでこういうシーンなんですが、何かもう正直てんかずっていうか夏組の話だなこれ?って思ってました。だって夏組大好きなので……。夏組は最高だな……。


■「怖かった」と言うこと
プロットを作った段階で、一つの目的地が「一成が夏組に対して怖かったと言うこと」でした。
一成にとって必要なことは何かを考えた時、「自分の口で自分の言葉で感情を伝えること」なんじゃないかなと思ってました。一成は自分の本音を口にすることが苦手で、相手にとってプラスの言葉を自然と口にできるタイプなので、「怖かった」とかそういう感情をなかなか表に出さないだろうと思います。加えて、「自分が死んだ過去」に付随する感情を伝えたら、同じように苦しんでしまうとわかっているから、自分の内側に閉じ込めてしまうだろうなと思います。
ただ、過去の記憶に囚われている一成にとっては望ましくない事態なんですよね。というか、こういう負の感情って下手に自分の中に抑え込んでしまうと行き場をなくしてどんどん凝縮されてしまうので……。誰にも彼にもぶつけることは得策じゃないと思いますが、信頼できる相手に「怖かった」と口にするのは大事なことだと思います。混沌とした感情に名前がつくということもあるし、行き場を失くしたマイナスが外に放出されるので。一成は、本当はもっと、怖いとか苦しいとか憎いとか許せないとか、そういう感情をちゃんと外に出したほうがいいんですよねこの場合。性格上難しそうだけど、すごくすごく心が傷ついた時は、信頼できる相手に感情をそのまま表に出したほうがいいし、心のケアになると思います。
そういうわけで、とても長い遠回りをしたうえで、ようやく一成は「怖かった」と言います。この時の相手は、てんかず的には天馬なのでは?とも思ったんですが、椋になりました。いや何か話の流れ的に「これ天馬じゃないな……」と思って。ルムメ大好きっていうのもあるんですけど、何かやっぱり夏組の中でも一緒に日常を過ごした時間が長くて、愛おしい毎日を知っている椋が相手として一番ぴったりの気がしたんですよね。日常の象徴なのかもしれない。


■天馬の決意
殺された公園に行く必要があるだろうなというわけで、夏組全員で向かいます。まあ、話の流れとしても決着という意味で、ある意味では全ての始まりである場所が最終地点になるのは順当なので……。
この時、天馬は改めて色んなことを決意するし、それは今まできちんとした形になっていなかったものが言葉として明確になった瞬間でもあります。

>オレは、この理不尽を許してやらない
これはある意味天馬らしいというか、一成だとできない決意だろうなと思います。一成はあんまり苛烈な感情持ち続けるの苦手そうなので。とは言っても、天馬も憎しみを持ち続けるとかそういうことではないんですけど。作中でも言っていますが、「許さないことと、怒りや恨みを持ち続けることは、意味が違う」ので、ただ事実として天馬は「許さない」と決めています。いずれ一成はきちんと笑えるようになるし傷も癒えるだろうと思っているけど、なかったことにはしてやらない。一成が理不尽な目に遭って傷ついた、という現実をなかったことにしたくないし、するつもりもない。過去のことだからとか、もう終わったことだから、とかそういう扱いではなく事実が決して変わらない限り許さないと決めた。でもそれは恐らく、だからこそ一成を守りたいと思うことだし一成を大事にしたいという気持ちにも連なるから、最終的には一成が大切だって何度も噛み締める決意になるような気がする。

>「お前が立ち止まるなら、オレが代わりに一歩になる」
立ちすくんだ一成を前にした天馬の決意であり、ある意味負けん気というか、屈してたまるかという気持ちでもある。
一成はいざ自分が死んだ場所を見ようとしても簡単には動けない。そこに何もないと頭ではわかっていても、心は簡単にうなずかないので。そんな時に手を引くのはきっと天馬なんじゃないかと思うんですよね。これはまあ、夏組全体に言えることでもあるんですが、「あなたが立ち止まってしまうなら、代わりに手を引くよ」が夏組だよなという。中でも天馬はリーダーとしてこの気持ちが強いというのもあるんですが、ただ、天馬にとっての一成って「新しい世界に連れ出してくれた人」だと思ってるので、だからこその決意でした。
一成にとって天馬は世界を新しくしてくれた人だと思うけど、天馬にとって一成は新しい世界に「行こう」って言ってくれる人だと思うんですよ。だからこそ、今まで何度も手を引いてくれた一成の手を今度は自分が握ってやる。先へ進めないというなら、踏み出す一歩が怖いなら、それなら今度はオレが代わりに手を引いてやる。お前の一歩になってやる。っていう決意をしてくれるのが天馬なんじゃないかなぁと思ってます。


■「おやすみ」
タイトルにもある通り、全体を通してのキーワードは「おやすみ」でした。安寧の夜を、穏やかな眠りを、という祈りを込めた言葉です。
というわけで、その辺りを凝縮した最後のシーンなんですが、202号室で一緒に眠る天馬と一成のくだり、自分で書いてても「相思相愛がすごい」と感動してました。何の憂いもないからね……まあそうもなるよね……。書いてて最高に楽しかったです。
そして放っておくとすぐプロポーズするんですが今回も案の定です。でも正直、人生を共に歩む誓いは何回でもやってほしいからいくらでもプロポーズしてほしい。なお、カンパニーメンバーにはおおむねバレてます。そらこれだけ天馬が一成のこと大事にしてて一成も天馬のこと特別視してればそうでしょうね。気づいていないメンバーを挙げたほうが早いのは本当にその通り。
最後は天馬の「おやすみ、一成」で終わるんですが、これは元々話のイメージが「天馬から一成におやすみって言う」だったからです。ただ、あとで読み返して気づいたんですが、意図せず冒頭で一成が「おやすみ、テンテン」って言ってたので何となく綺麗につながった感じで嬉しい。「夢も見ずにおやすみ」という文章はプロットの段階からあったので、この言葉で終わりにできたのも嬉しかったです。わりと芝居がかった感じだけど、この話の天馬ならたぶんこれくらいナチュラルに言う。楽しかった。







思いがけず長くなったうえ、流血表現や一成が精神的に不安定になる描写のある話だったので「大丈夫なのかな……」と心配していますが、最後まで読んでいただけていたら幸いです。
ここまで目を通していただき、ありがとうございました!








=余談=
今回も音楽のお世話になりました。イメージソングではないけどよく聞いてた曲。
「だきしめるまで。」MIMI feat.可不:一成が精神的に不安定になるシーンでよく聞いてました。抱きしめてくれ……という気持ちがすごい。
「Find The Place Where You Are Alone」Unknöwn Kun:天馬と一成二人きりシーンの時とか特に。「I will catch the stars and light up the darkness(星を掴んで、暗闇を照らす)」とか天馬っぽいなと思って。
あと全体として米津玄師「Lemon」「orion」「馬と鹿」もよく聞いてたし、マシュマロで教えてもらったRADWIMPS「前前前世」も聞いてました。(一億光年の恋だ……すごい……って思ってました)