終演までは、どうかワルツを。 11話


<from SUMMER TROUPE>


 どうにか勝利したのは、ひとえに後々現れた助っ人のおかげである。
 パーティーのメイン会場は中庭のようで、天馬がカジノに翻弄されている間に着々と準備は進んでいた。結果として、手が空き始めたメンバーは暇になって談話室へやってきて、天馬の奮闘を眺めていたのである。
 最初はただ見守っていただけだったはずだった。しかし、密がディーラー役となり始まったブラックジャックで、千景が口を挟んだのだ。「可愛い教え子のピンチには黙っていられないかな」と。
 先ほどまでのバカラで天馬がぼろ負けしたことは事実だったけれど、恐らく密への何らかの意趣返しなんだろうな、というのはその場にいた全員が理解していた。
 結局千景の言葉を皮切りにしてアドバイスが始まり、左京の戦略的意見や三角の勘、至のゲーム的知識などを味方につけつつどうにか勝利を得ることができた。
 助言はアリかナシか、という点で議論の余地はあったものの、「誕生日だからね」ということで一件落着となったのだ。

「そろそろいい時間だから、メイン会場の中庭へご案内~!」

 全ての勝負を終えると、一成がテンション高く宣言する。今まで忙しく中庭や談話室を行き来していたメンバーも、ほとんどが談話室にそろっている。つまり、準備は完了したということなのだろう。
 夏組一行は、天馬を連れて談話室を出る。アイマスクはもう要らないらしいので一体あれは何だったんだ、と天馬は思ったのだけれど。
 中庭が見えてきた時点で理解した。
 MANKAI寮の中央に位置するのは、吹き抜けになった中庭だ。団員たちの憩いの場であり、パーティー会場になることもある。
 今回も、丸い机がいくつも置かれてその上には料理が並び、机の合間にはカラフルな風船や、ヒマワリのガーランドなどが飾られて、まさしくパーティー会場然としている。
 ただし、中庭の中央には明らかに異質なものが一つ鎮座していた。

「じゃーん! やっぱりテンテンって言ったらこれかなと思って☆」
「てんま~、サンカクついてるんだよ~!」
「ま、アリババの相棒としてはぴったりなんじゃない?」
「すごいよね! こんなのあるんだってびっくりしちゃった」
「カズくんが見つけたんだよ。睫毛が長くてかわいいよね」

 中庭の中央には、等身大のフタコブラクダのオブジェが置かれていた。恐らく二メートルはある。全体的にアラビア風の装飾がほどこされていて、なるほどアラビアンナイトだな、と思えなくもなかったけれど。

「いや誰か止めろよ!」

 自分たちにとって特別な旗揚げ公演。それになぞらえて選ばれたことは理解できるけれど、どう考えても大きすぎる。
 せめて卓上サイズの置物ならまだわかる。等身大をなぜ選ぶ。デフォルメされているのであまりリアル感はないけれど、存在感がありすぎる。
 寮内を行き来すれば嫌でも目に入るサイズだ。だから、これを見られないようにアイマスクをつけての移動だったのだと天馬は悟った。
 どうせなら最後に見せて驚かせる計画だったのだろう。目論見通り驚いた。予想外すぎる。

「テンテンの家なら置けるから大丈夫だって!」
「そういう問題じゃない」

 置き場所以前の問題だ、と続けると背後から「天チャンの家、広いッスね!」という声がした。談話室からぞろぞろとメンバーが中庭に出てきており、一連のやり取りを聞いていた太一のものだった。
 口々に同意の声が上がるのは、一般住宅にはとても置けそうにないサイズ感だからだ。

「このサイズで作りもしっかりしてるとなると、ずいぶん値もはりそうだな」
「オレの知り合いから安く譲ってもらったから大丈夫だよん♪フルーチェさんも欲しかったら言ってね!」
「要るか」

 一成の言葉に、左京が苦笑を浮かべて答える。一成は「残念☆」と軽やかに笑ってから、それとなく周囲を見渡した。
 全員この場にいるかどうかを素早く確認。それから、天馬以外の夏組へ目配せを送る。うなずきが返ってきたことを認めてから、一成は口を開く。

「――みんな注目~☆春組・秋組・冬組、テンテン誕生日パーティーのレクほんっとにありがとねん♪めっちゃ楽しかった! ってわけで、最後はオレら夏組からの、全員参加レクリエーション! 題して、皇天馬クイズ大会~!」

 テンション高めに言い切ると、幸・椋・三角・九門が一成の隣へと進み出てくる。何事か、という顔をしているのは主催者以外の全員だ。

「テンテンに関するクイズを50個出題するから、一番正解数が多い人が優勝だよん。張り切って答えてね☆」
「あ、でも、天馬さんは二回目からの回答ね! 誰かが答えてからじゃないと、答えちゃだめ!」

 九門が慌てたように付け足す。さすがに本人は有利だろうと加えられたルールのようだ。天馬もそれはそうだろうと思ったので、異論はない。

「クイズはテーマごとに、それぞれ10個ずつ考えたんだ。本当は20個ずつ、みんなで100個考えたからいつかできるといいな……」
「サンカクの問題いっぱい考えたよ~!」
「かぶってた時の予備にできるから、多めに考えといて損はないんじゃないの」

 椋がはにかんで言えば嬉しそうに三角が言い、幸も続く。それを聞いていた監督が不思議そうに尋ねた。

「夏組は問題全部知ってるわけじゃないのかな……?」
「クイズ内容のすり合わせとかしてないから。同じ問題もあるかもね」

 肩をすくめた幸が言えば、楽しそうな一成が「ってわけで!」と声高く言う。

「自分の出題範囲以外はオレたちも参加するからよろしくねん♪」

 ピースサインを掲げた一成の言葉に、ぼそりと答えたのは至だった。心から、といった調子で言葉を落とす。

「天馬のクイズで夏組に勝つとか無理ゲー」

 恐らくそれは、中庭にいた夏組以外のメンバー全員の感想だった。