終演までは、どうかワルツを。 29話
意を決して、一成は天馬に連絡を取った。
今までのことを謝り、話がしたいと申し出る。無視されることはないと思ったけれど、忙しい身の上だ。すぐに返事がないことも覚悟していた。しかし、ある意味では予想通りに天馬からはすぐに答えがある。
――待たせやがって。わかった、日程は調整する。逃げるなよ。
事務的な返事が来てもおかしくはないと思っていたのに。返ってきたメッセージからは天馬の声が聞こえるような気がして、一成は小さく息を漏らした。
思わず笑ってしまうような、反対に泣くのをこらえるような、そんな吐息。
きっと天馬は呆れた顔をして、それでも笑っているのだと一成は疑いなく思う。一成からの言葉をきちんと受け取って、そうして返してくれる。
その事実が嬉しくて、だけれど同じくらいに申し訳なくて仕方がない。だけれど、そうやって罪悪感にかこつけて逃げるのは止めたのだ。だからこうして連絡を取っている。
――逃げないよ。
どうにかそれだけメッセージを送った。
一成が送るにしては極端に短い言葉。そこに込められた覚悟に、天馬は気づくだろうか。きっと気づくだろうと一成は思う。短い言葉からだって、天馬は簡単に一成の心を見つけ出してしまうのだから。
一成は自分が息を止めていたことに気づいて、大きく息を吐き出した。
たった一つのメッセージを送るだけでもこんなに緊張するなんて、それこそ天馬と付き合い始めた時以来じゃないかと一成は思う。
恋人同士という関係になった当初は、今までなら難なく送れたはずのメッセージが簡単には送れなくなっていた。友達ではなく、恋人として天馬を意識すればするほど、指が止まってしまっていたのだ。
あの時みたいだな、と思う一成は、天馬から送られたメッセージをそっと指でなぞる。
天馬からはすぐに日付の連絡が来た。スケジュールの関係上、てっきりだいぶあとになるかと思っていたら、案外その日は近かった。天馬曰く、この日は元々オフにするため調整していたらしい。
元々、天馬の提案にノーと言うつもりはなかったので、一成は了承の返事を送る。
日付が決まればあとは場所だった。天馬は、場所なら一成が決めていい、と言う。話をするのに適した場所として浮かぶ選択肢はいくつかある。
――MANKAI寮がいいんだけど、だめかな?
最終的にそう送った。事情を話せば、どこか一室を借りることはできるだろうし、MANKAI寮であれば確実に秘密は守られる。何より、あの場所ならば一成の気持ちを奮い立たせてくれる。
天馬から返ってきた了承の言葉を確認した一成は、一つ深呼吸をして再びスマートフォンに指を走らせる。
――それからテンテン、もう一個頼みたいことがあるんだけど、聞いてくれる?
天馬からの返事が来るまでは、あと少し。